フィリピン硬貨の旅 [コイン編] フィリピン硬貨に描かれている歴史的英雄

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さて、皆さんはフィリピンのお金についてどこまでご存知でしょうか。

フィリピン旅行の際には、日本円からフィリピンペソに両替することも多く、フィリピンペソの紙幣や硬貨を目にした方も多いでしょう。
では、その紙幣に絵描かれている人物は誰なのか、紙幣に描かれている場所はどこなのか知っていますか?

ご存知の通り、単位はフィリピン・ペソ( P )。補助通貨はセンタボ( ¢ )。
紙幣の種類にはP1,000、P500、P200、P100、P50、P20 の6種類。
硬貨の種類はP10、P5、P1、¢25、¢10、¢5、¢1の7種類となっています。

なお、英語とフィリピン語での表記が混在していますが、どちらも同じ意味です。
Piso (フィリピン語/ ピソ) = Peso(英語/ ペソ)
Sentimo (フィリピン語/ センティモ) = Centavo (英語/ センタボ)
1ペソ = 100センタボ

今回はコインに描かれている歴史的人物やその内容について共有したいと思います。

 

 

現在のフィリピン硬貨の歴史

2018年3月26日、BSP (フィリピン中央銀行/ Bangko Sentral ng Pilipinas) は、20ペソ、10ペソ、5ペソ、1ペソ、25センタボ、5センタボ、1センタボで構成される新世代通貨 (NGC / New Generation Currency) をリリースしました。

これは、2010年のNGC紙幣の発行に続くもので、紙幣同様、硬貨にも偽造を防止するために最新の技術を使用して強化されたセキュリティ機能を備えています。その金属組成は、貴重な金属含有物の違法な抽出を阻止するために変更されました。過去には、この手法により、海外の製錬事業体の金属含有量を抽出するために、大量の硬貨が買いだめされていました。 NGC硬貨シリーズの金属組成も、耐摩耗性と耐食性の向上に貢献しています。

新世代通貨シリーズは、2019年12月に発売された20ペソ硬貨と、2018年3月に発売された10ペソ硬貨、5ペソ硬貨、1ペソ硬貨、25センタボ硬貨、5センタボ硬貨、1センタボ硬貨の7つで構成されています。

これらはデザイン面では美しさと、機能面ではセキュリティ強化を実現しました。特に、20ペソ硬貨、10ペソ硬貨、5ペソ硬貨には、レーザー彫刻技術を使用したマイクロプリントが含まれており、従来のコイン偽造方法を使用してこれらのコインを複製することは困難です。新世代通貨の金属組成は、金属含有量を抽出するために大量のコインを貯留するという違法行為も阻止します。

また、今回20ペソ硬貨が新規に発行された理由として、現在フィリピン全土で最も流通しているのが紙幣が20ペソ紙幣ですが、材質上損傷が早く、損傷した紙幣はフィリピン中央銀行に返却され交換されます。紙幣の代わりに硬貨を発行する方が、長持ちし長期的にはコスト効率が高くなるということです。

なお、新20ペソ硬貨は現在流通している20ペソ紙幣と、セキュリティ強化された新5ペソ硬貨は現在流通している旧5ペソ通貨は、現在もすべて使用可能です。

 

フィリピンの最新の硬貨

新世代通貨 (NGC / New Generation Currency)には、BSPロゴ、象徴的な歴史的建造物、様式化されたフィリピンの旗、並びに固有の植物が特徴的に描かれており、フィリピンの動物等を描いているNGC紙幣シリーズのデザインと統一性を持たせています。

 

20ペソ硬貨

表面には、人物:マニュエル・ケソン (Manuel Luis Quezon y Molina)フィリピン第2代大統領。マニュエル・ケソン は、現在の20ペソ紙幣にも描かれており統一性が保たれています。

裏面には、フィリピン中央銀行ロゴマーク、建物:マラカニアン宮殿、植物:Nilad (ニラッド/ Scyphiphora) が描かれている。

ニラッドは、首都マニラの名の由来と言われている植物です。
マニラは、英語表記ではMANILAですが、フィリピン語表記ではMAYNILAであり、そのフィリピン語のマイニラ (Maynila) がニラッド (Nilad) からの由来という説があります。

なお、新20ペソ硬貨と現在流通している20ペソ紙幣とは、現在も両方とも使用可能です。

マニュエル・ケソンについては「20ペソ紙幣編」もご覧ください。
https://www.ptn.com.ph/staff-blog/2020/09/04/historical-heroes-and-landscapes-depicted-on-philippine-banknotes-20php/

エッジの厚さ:2.05 mm
直径:30.0 mm
重さ:11.5 g

 

10ペソ硬貨

表面には、人物:アポリナリオ・マビニ (Apolinario Mabini y Maranan) が描かれています。

裏面には、フィリピン中央銀行ロゴマーク、、植物:Kapa-Kapa (Medinilla magnifica/ メディニラ マグニフィカ) が描かれている。

アポリナリオ・マビニは、国民的英雄ホセ・リサールの組織に属し、リーサルのために活動していたとされる。1898年の独立革命でもアギナルド将軍 (後のフィリピン初代大統領エミリオ・アギナルド) の首席顧問 (革命政府の内閣首相) であり「革命の頭脳」と呼ばれ、フィリピン共和国の独立の憲法構成を作りました。

アポリナリオ・マビニは、過去に流通していた旧10ペソ紙幣に描かれており、ここでも統一性が保たれています。

エッジの厚さ:2.05 mm
直径:27.0 mm
重さ:8.00 g

 

5ペソ硬貨

表面には、人物:アンドレス・ボニファシオ (Andrés Bonifacio y de Castro) が描かれています。

裏面には、フィリピン中央銀行ロゴマーク、、植物:Tayabak (ヒスイカズラ/ Strongylodon macrobotrys) が描かれている。

アンドレス・ボニファシオ (1863年11月30日 – 1897年5月10日) は、スペインの植民地支配からの独立を目指すフィリピン独立革命のリーダーの一人です。
貧しく家柄も低い家庭に生まれ、自身で働きながら学費を稼ぐなど、苦学して多くの外国語を独習、独自の革命理論を説いた。後にホセ・リサールの「ラ・リガ・フィリピナ」参加し、リサールが逮捕・流刑され組織が解体させられると、ボニファシオ は1892年独立革命を目指す秘密結社「カティプナン」を創設した。

しかし、ボニファシオとアギナルド (後のフィリピン初代大統領エミリオ・アギナルド) は革命の方針をめぐって対立し、多数派となっていたアギナルド派はボニファシオ派に勝利、アギナルドが独立派の全権を掌握するに至った。
敗れたボニファシオはアギナルドらと袂を分かち、独自の独立革命を進めようとしたが、ボニファシオの離反を恐れたアギナルドにより逮捕され、1897年5月10日に処刑された。

ボニファシオの運動は、同じ独立革命時代に生きた運動家ホセ・リサールと並び、フィリピン人からの尊敬の対象となり、彼の誕生日である11月30日は「ボニファシオの日/ Bonifacio Day」としてフィリピンの祝日となっています。また1951年発行の20ペソ紙幣よりたびたび、紙幣の肖像に使用されています。

なお、セキュリティ強化された新5ペソ硬貨と現在流通している旧5ペソ通貨は、現在も両方とも使用可能です。

エッジの厚さ:2.20 mm
直径:25.0 mm
重さ:7.40 g

 

1ペソ硬貨

表面には、人物:ホセ・リサール (Jose Protacio Mercado Rizal Alonzo y Realonda) が描かれています。

裏面には、フィリピン中央銀行ロゴマーク、植物:Waling-Waling (ヒスイランの一種) が描かれている。

ホセ・リサール (1861年6月19日 – 1896年12月30日)は、非常に優秀で、医者、著作家、画家、学者、教師、哲文学博士、そしてフィリピン国家独立の革命家とされ「国民的英雄」となっています。
言語はフィリピン言語のタガログ語を母国語とし、フィリピン地方言語のビサヤ語やイロカノ語、他にも中国語や日本語の研究、当時の宗主国であるスペインへなどヨーロッパ各国に留学し、また日本への滞在歴もあり、最終的には20数言語を習得していたと言われています。

彼は、ヨーロッパ留学時代に出版した小説「ノリ・メ・タンヘレ」と「エル・フィリブステリスモ」がスペイン圧政に苦しむ植民地フィリピンの様子が克明に描き出されており、宗主国スペインから危険視され、また1892年「ラ・リガ・フィリピナ (フィリピン同盟)」を創設しフィリピン独立運動もしていたため、最終的に逮捕、35歳の時に銃殺刑となりました。

国民的英雄ホセ・リサールは、フィリピン通貨にフィリピンの偉人が描かれるようになった当初より真っ先に選ばれ、1ペソ・2ペソ紙幣や1ペソ硬貨に描かれ、ここでも統一性が保たれています。

エッジの厚さ:2.05 mm
直径:23.0 mm
重さ:6.00 g

 

25センタボ硬貨

表面には、フィリピンの国旗にも描かれているフィリピンのシンボル:太陽と3つの星が描かれています。

裏面には、フィリピン中央銀行ロゴマーク、植物:Katmon (Dillenia philippinensis/ ビワモドキの一種) が描かれている。

Dillenia philippinensis (katmon) は、フィリピン固有の植物で、都市緑化に利用されています。katmonはフィリピン中の低地〜中高度の山に繁殖しますが、高地の涼しい気候には耐えられません。

フィリピンのシンボルの 3つの星は、フィリピンの3つのブロックであるルソン島・ヴィサヤ諸島・ミンダナオ島を表している。
太陽から伸びる8本の光は、フィリピン独立革命で最初に戦ったルソン島の8州 (パンパンガ州、ブラカン州、リサール州、カビテ州、バタンガス州、ラグナ州、ターラック州、ケソン州) を表している。

エッジの厚さ:1.65 mm
直径:20.0 mm
重さ:3.60 g

 

5センタボ硬貨

表面には、フィリピンの国旗にも描かれているフィリピンのシンボル:太陽と3つの星が描かれています。

裏面には、フィリピン中央銀行ロゴマーク、植物:Kapal-kapal baging (Giant calotrope/ カロトロピスの一種) が描かれている。

Kapal-kapal bagingはフィリピン固有の植物で、低木ながら4 mの高さに成長します。各花は、5つの尖った花びらと、おしべを持つ中央から立ち上がる小さな「冠」で構成されています。

エッジの厚さ:1.6 mm
直径:16.0 mm
重さ:2.20 g

 

1センタボ硬貨

表面には、フィリピンの国旗にも描かれているフィリピンのシンボル:太陽と3つの星が描かれています。

裏面には、フィリピン中央銀行ロゴマーク、植物:Mangkono (Xanthostemon verdugonianus, Philippine ironwood/ フトモモの一種) が描かれている。

Philippine ironwoodは、フィリピン固有の植物で、ビサヤ、パラワン、北東ミンダナオの島々に植生しています。Philippine ironwoodは、直径は最大約1.2 m、高さは最大約10 mにもなる大型の樹木で、非常に強く耐久性があり、蒸気船のプロペラシャフトのベアリング、または船尾ブッシングに最適な素材となります。その他の用途としては、ローラー、ハサミ、工具ハンドル、波止場や橋梁用の柱や杭、住宅用の柱など資材として用いられます。

しかし近年、過剰収穫と植生地の減少により、国際自然保護連合IUCNにより「希少・絶滅危惧種」に分類されています。

エッジの厚さ:1.54 mm
直径:15.0 mm
重さ:1.90 g

 

まとめ

1521年、マゼランがフィリピンを発見してマクタンの戦いで敗れてから44年後、スペインは1565年のミゲル・ロペス・デ・レガスピによるセブ島への植民基地設立を皮切りに、フィリピン全土を植民地化していきました。
1898年のフィリピン革命とアメリカスペイン戦争で、333年のスペイン植民地時代は、終わりを迎えました。しかし独立・解放に喜んだのも束の間、アメリカがフィリピンの独立を認めず、スペインよりフィリピンの統治権を得たアメリカが植民地としました。

アメリカ統治時代 (1898年-1946年)の中で、1942年太平洋戦争中の日本軍がフィリピンを占領したことにより、日本はフィリピンのアメリカからの独立を支援し設立されたフィリピン第二共和国(1943年-1945年)、しかし日本の敗戦から再度アメリカの植民地に戻り、その後1946年にアメリカより完全に主権を取り戻しフィリピン第三共和国設立まで、植民地とされた期間は合計381年。

この長い植民地支配下の中で、何度も起こった独立運動や独立革命。そして最終的に主権を取り戻し自由を手にするまでに、生まれた英雄や散っていった英雄たち。
その国家独立の英雄たちを、現代のフィリピン人たちは100年経った今でも忘れることなく尊敬し誇りとしています。

そういうフィリピン人の情熱が宿ったフィリピンの紙幣や硬貨。
少しでもフィリピンの歴史や英雄に触れてもらえればうれしいです。

 

The images of banknotes on this page are provided by Bangkok Sentral ng Pilipinas.
http://www.bsp.gov.ph

 

 

(SHIN)